気候変動への対応
気候変動への対応
気候変動に対する認識
IRMは気候変動問題が自然環境と社会構造に劇的な変化をもたらし、事業活動全体に大きな影響を与える重要課題であると認識しており、2020年3月に「気候関連財務情報開示タスクフォース」(以下「TCFD」といいます。)の提言に賛同しました。
ADRではこのTCFD提言に基づき、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」のフレームワークに沿って気候変動に係る分析・開示を行っています。これにより、気候変動がもたらすリスクと機会を適切に評価し、投資法人の経営と運用方針に反映させることにより、持続可能かつ安定的な収益を長期的に確保することを目指します。
ガバナンス
経営層の役割及び取締役会・投資法人役員会の監督
- IRMでは、代表取締役を委員長とする「サステナビリティ推進委員会」と、各部の実務担当者により構成される「サステナビリティ実務委員会」を設置しています。
- サステナビリティ推進委員会は年2回以上開催され、サステナビリティに係る目標や施策の立案、気候関連リスクと機会の特定・評価、気候関連リスクの分析と全社的な管理、環境パフォーマンス・ESG外部評価結果のモニタリング、目標への到達度確認、残課題や新たな課題のための目標再設定、というPDCAサイクルを実施し、中長期的な資産価値の向上を目指しています。
- サステナビリティに関する目標はサステナビリティ最高責任者である代表取締役が決定し、目標や施策の進捗状況等については、年1回以上IRM取締役会・各投資法人の役員会に報告しています。これら目標達成に必要な各種施策の推進をサステナビリティ実務委員会が担います。
リスク管理
管理プロセス(リスクの特定・評価・全社リスクマネジメントとの統合)
- IRMは気候変動を含む種々のリスク及び機会を把握し、基本的考え方及び社内管理体制等を明確に定め、業務の適切な運営および経営の健全性確保に資することを目的として、「リスク管理規程」及び「リスク管理基準」を社内規程として定めています。
- IRMは気候関連リスクを事業に対する財務・戦略面で重要な影響を及ぼすものとして位置付ける一方で、この気候関連リスクを機会としても捉え、全社的なリスク管理プロセスに統合してマネジメントしています。コンプライアンス・リスクマネジメント室が気候関連リスクを含むリスクを各部から集約し影響度評価を行った上で、マネジメント層による議論を経て全社的リスクとして決定します。
- コンプライアンス・リスクマネジメント室は、全社的リスク・機会のモニタリング状況について年に2回、最高経営責任者(CEO)である代表取締役社長へ報告すると共に、適宜IRMのコンプライアンス委員会及び取締役会に報告します。
戦略
気候変動に伴う様々な外部環境の変化の要因を「移行リスク」と「物理的リスク」に分類の上、リスクと機会を特定・評価しています。事業への影響については、影響が大きい要素を選定してシナリオ分析を行っています。移行リスクでは、「政策/規制・市場・評判」、物理的リスクでは、「急性・慢性」を、機会では「市場・エネルギー源・資源の効率性・製品及びサービス」を中心に分析・算定を行っています。気候変動に関する「リスク」に対応するとともに、「機会」に向けた取組みを強化していくことで、環境負荷の低減と中長期的な企業成長の両立を目指します。
シナリオ分析の実施
リスクと機会を特定・評価する背景となる4℃ および1.5℃の気候変動関連シナリオに基づくADRを取り巻く世界観は以下の通りです。
リスク・機会の特定及び影響分析
ADRでは4℃シナリオ、1.5℃シナリオにおいて想定される気候関連のリスクを特定するとともにその対応優先度を把握するため、「リスクごとの発現時期」を検討し、以下の通り図式化しました。「事業インパクト」は各リスクがもたらす財務影響額をもとに示しています。
※「発現時期の目安」は、分析を行った2023年度時点から見た、各リスクの発現可能性が高いと想定される時期を示しています。なおこの発現時期については、第三者機関の助言をもとに各シナリオの世界観を考慮して定性的に考察したもので、発生時期の正確性を保証するものではありません。
特定したリスク・機会と対応策
区分 | 要因 | 影響 (リスク/機会) |
財務影響 (百万円) |
対応策 | ||
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4℃ | 1.5℃ | 概要 | ||||
移行リスク |
政策規制 |
炭素排出量抑制に向けた関連規制の強化 | 炭素税の導入に伴う事業活動へのコスト増加 | 78 | 121 |
|
炭素税の導入に伴う建設資材の調達コスト増加 | 62 | 97 |
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評判 | 気候変動対応を重視した投融資の進展 |
保有物件が気候変動に対応できないことによる投資額の減少(優遇金利が適用されないことによる金利上昇) |
- | 231 |
|
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市場 |
テナントの需要変化(気候変動対応物件へのニーズの高まり) |
保有物件が気候変動に対応できないことによる賃貸事業収益の減少 |
- | 1,054 |
|
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物理リスク |
急性 |
集中豪雨、台風・洪水、土砂災害、高潮等の自然災害の激甚化・風水害リスクの上昇 |
自然災害の激甚化による保有資産の破損及び営業機会の損失 |
438 | 219 |
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慢性 |
平均気温の上昇・自然災害の激甚化 |
平均気温上昇によるエネルギー費用の増加 |
5 | 86 |
|
|
自然災害の激甚化による損害保険料の増加 |
11 | 5 |
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機会 |
リソースの効率 |
省エネ関連規制の強化 |
省エネ対策への適応による運営費の削減 |
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製品及びサービス |
テナントの需要変化(気候変動対応物件へのニーズの高まり) |
テナントへの低炭素排出設備・サービス提供による賃料収入の増加(高稼働、高賃料) |
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市場 |
気候変動対応を重視した投融資の進展 |
気候変動に対応することによる資金調達コストの減少、投資の呼び込み拡大(優遇金利が適用されることによる金利低下) |
(注)財務影響に記載している金額は年間影響額です。本投資法人の事業活動にとって特に影響が大きいと考えられる気候変動要素に関し、そのリスクと機会の分析を行いました。 また本試算は本投資法人の運用実績を踏まえ、国際機関等が提示するシナリオや関連省庁、第三者が公表するデータに基づき参考に試算したものであり、数値の正確性を保証するものではありません。想定する対応策についても、影響試算上の想定であり、実行を計画・決定したものではありません。
指標と目標・実績
エネルギー消費量 | 2030年までに20%(原単位)削減(2018年度比) |
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GHG排出量 | 2030年までにScope1・2 51%(総量)削減(2018年度比) 2050年 ネットゼロ達成 |